「量子水」なるものがあるという。「量子水」を作り出せるという「νG7(ニュージーセブン)」公式ページを覗くと、こうしたことが書いてあった。
サイト: https://www.ib-castle.com/vg7/
νG7(ニュージーセブン)を通過すると、ヘキサゴンフィールド変換器内で磁気や微弱な電磁場の影響を受けた水(H2O 酸化水素)の水素結合が緩んで一部イオン化し、 酸素や水素を気体のまま含んだエネルギーポテンシャルの高い水として活性化します。
物理的に不可能な構造
「ヘキサゴンフィールド変換器」とは一体何なのか。読み進めると、以下のように書いてある。
νG7(ニュージーセブン)ヘキサゴンフィールド変換器は、六角の多重層からなるコアを通過させることにより、外部 からエネルギーを一切加えることなく、また、通過する水そのものにも何ら手を加えることなく、自然界の水への作用を一部再現する構造となっています。
この時点で、一般的な科学の素養がある人はピンと来るだろう。「外部 からエネルギーを一切加えることなく」という点がポイントだ。
外部からエネルギーの供給なしに、水の水素結合をバラすことはできないし、ましてやイオン化することも不可能だ。これが可能になると、第1種永久機関が存在することになり、物理学に反する。
一方で、正しく水(水道水)の電気分解を行えば、電解水と言って、酸度の高い水からアルカリ度の高い水まで作ることは可能だ。これは高校程度の化学で説明がつくことで、陽極側に酸度の高い電解水と酸素が生成され、陰極側にアルカリ度の高い電解水と水素が生成される。これには外部から電流を流す必要がある。つまりはエネルギーを与えて水を分解するのだ。
しかしながら、「ヘキサゴンフィールド変換器」は外部からエネルギーを加えずに水素結合を緩めるなどと書いてあり、これは不可能だ。
「反証」しづらい製品説明
以下のようなポット型の製品もあるようだ。
これら製品の説明に共通することは、物理学、化学、工学などでは普通利用されない用語を用いて、定義を曖昧にすることで詐欺に当たらないように工夫していることだ。
これらは科学的にいうと「反証可能性に欠ける」と言って、前提条件の定義が曖昧で、かつ実験や観測の手法が不明であるために、科学的な実験を行うことができない。これはつまり科学の枠組みで検証することができないということである。
怪しさを感じるポイント
残念ながら「水」界隈は胡散臭い疑似科学が溢れかえっており、科学リテラシーのない人間にとっては何が本当かも見分けがつかないかもしれない。
ここで一つ見分け方を紹介しよう。
怪しいポイント1: 「特許取得」「公的な認証」を押し出している
業者としては、大手メーカーほどの信頼がない自らに信頼を持たせるために、公的な認証手段に基づいた「権威に訴える」という手段を取る。
上記の「日本水道協会/JWWA」認証は水道の「耐圧性能」などの基準をクリアしたものである証明に過ぎない。これによって「量子水」の科学的正しさが担保されるわけでは無い。
こういった認証制度取得のアピールに加えて、取得した特許を押し出して「正しさ」感を虚飾する場合もある:
「特許」は科学的正しさを証明するものではない。「自然法則を利用した技術的思想の創作」であれば審査を経て取ることが可能だ。特許の審査自体では追試などの実験が行われることはない。
怪しいポイント2: 用語が「造語」で関連する論文があまり出てこない
「量子水」「磁気活性水」などはもちろん、上記の「簡易テラヘルツ波」「回転エネルギー水」などは正式な科学用語ではない。
これらの用語を見つけたら、CiNiiで検索をかけてみることだ。CiNiiは論文を検索できる国立情報学研究所のサービスだ。
検索すると、4件ヒットするが上の2件は「量子水素」についてであり、無関係だ。下の二件は「量子水」に関するものである。あれ?論文があるぞ!正しいのかな!などとは思ってはいけない。続いて、この論文を出版している学会を見てみる。
「日本補完代替医療学会誌」と「エルネオス出版社」というところだ。
「日本補完代替医療学会」について調べると、「専門家が読んで正しさを確かめる」という査読ありで信頼性は悪くないように思える。(個人的には、「代替医療」に眉唾ではあるが)
しかし、問題はこの論文に関して引用がないことだ。引用とは、文字通り論文を引用することを指す。普通、引用数が多いほど信頼度が高いとされる。
論文が幾ら出てきたとしても、同じ著者であれば信頼はできないので注意しよう。重要なのは「引用数」だ。ただ「自分で引用した」場合は論外だ。
怪しいポイント3: コアとなる技術は革新的であるはずなのに、Wikipediaに技術的論拠を示す記事がない
今回の場合、「ヘキサゴンフィールド変換器」は「量子水」を作る際のコアとなる技術のはずである。この技術があれば「量子水」を生成でき、素晴らしい効果を産む水を得られるのに、パナソニックやら東レやら三菱レイヨンは作ろうとしていない。なぜかというと、デタラメだからだ。
Wikipediaは政治的な記事は微妙だが、科学的な記事はある程度信頼がおける(必ず正しいわけでは無い。論文などの引用に使えるわけでは無い)。
そのWikipediaに「ヘキサゴンフィールド変換器」の記事がないのは「そんな技術が存在しない」か「技術ができたばかりで記事がない」か「マイナーすぎて誰も知らない」のどちらかになるのではないか。
ここで「技術ができたばかりで記事がない」というのは除外される。CiNiiで最初に「量子水」の記事が載ったのは2009年だからだ。
このため、この技術は存在しないのではないかとの疑いが強まる。
逆に上記「怪しいポイント」を満たしたからと言って、必ずその製品が「デタラメ」というわけではない。
しかし、確実に「量子水」「磁気活水器」などを謳う業者はこの傾向が見られるため、このような記事とした。
このようなデタラメな装置を買うくらいなら、逆浸透膜の浄水器などを買うのが良いだろう。