SBC, AAC, aptX で音質に違いはないとの結果

Bluetoothコーデックの違いで実用上音質は変わらない

謝花ミカ
Feb 27, 2021

以前より、既存のBluetooth A2DPのコーデックのSBC (Sub Band Codec)、AAC、aptXの3種の間で、聴感上科学的に違いはないと指摘してきた。

aptXは本当に高音質で低遅延なのかBluetooth SBCコーデックは本当に音質が悪いのか 参照)

この指摘の根拠を裏付ける実験結果がKamedo2氏より出ているので紹介したい。

紹介するのはブラインドテストの結果で、SBCとaptXはffmpegによりエンコードされたもの、AACはAndroidでよく使われるFDK AACでエンコードされたものだ。

ほぼ横並びの音質だが、aptXは特に不利な音楽ジャンルが目立つ

以下の図を見ていただくとわかるように、SBC、AAC、aptXのそれぞれにおいて平均オピニオン評点はSBCとAACでほぼ変わらず、若干aptXの最悪値が悪く、また平均も低くなっている。

(1) 音風景の管理人 on Twitter: “Bluetoothイヤホンで使われるコーデックの目隠し採点、結果出ました。SBC, AAC, aptX の全てが平均評点 4.5点以上となりました。 https://t.co/AIXo0rxh2y" / Twitter

また次の図はビットレートを落としてテストを行った結果で、SBCはビットレートが落ちると音質の劣化が激しいことがわかる。10年ほど前のBluetoothデバイスはビットレートが低く、音質が非常に悪かったが、この特性が影響していると考えられる。AACではこの比較の中でもっとも低い128kbpsであるにもかかわらず、比較的良い結果を残している。aptXは通常44.1kHzにおいて352kbpsのビットレートで固定であるため、256kbpsの結果は考えなくても良い。

逆に352kbpsのモードしか使えないaptXでは、接続安定性がAACよりも劣る(aptXは本当に高音質で低遅延なのか で接続品質の項目参照)と考えられ、電車の中などでは干渉しやすいため、ビットレートを落とすことのできるAACが良いと考えられる。ただ、aptX Adaptiveなども登場しており、そちらを使うことも今後あり得るだろう。(ただし、aptXのコーデックの特徴を受け継いでいるなら、AACの方が音質が良い可能性はある)

干渉が多い環境では帯域幅が減少するというのは、シャノン=ハートレーの定理で説明がつく。そのため、干渉が多い環境ではビットレートが低くても音質の良いコーデック、つまり現状AACを使うことで、ノイズが多く帯域が制限された環境を使うことで途切れなどを回避できる可能性が高まる。

低ビットレートでも優秀なAAC

(1) 音風景の管理人 on Twitter: “Bluetoothイヤホンで使われるコーデックの目隠し採点、結果出ました。SBC, AAC, aptX の全てが平均評点 4.5点以上となりました。 https://t.co/AIXo0rxh2y" / Twitter

Androidで通常使われるFDK AACはApple製品に搭載されていると考えられるApple製AACエンコーダより音質は劣ると考えられており、私もAndroidにおいてはAACよりaptXを使うべきと考えていたが、今回の結果でそうでもないと思えてきた。FDK AACが搭載されているAndroidであればなんの躊躇いもなくAACを使っても良いだろう。ただし、レイテンシなどにシビアなゲーム用途などでは、aptX LLなどを使うのが良いだろう。

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謝花ミカ

理系と文系の学際的領域から社会学、自然科学、工学分野について記事を書く。